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加藤一二三「求道心」

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 2016年に発売された加藤九段の著書です。副題に「誰も語れない将棋天才列伝」とあり、自らの60年以上にわたる棋士生活を中心に、対局してきた多くの天才棋士たちのエピソードを絡めた内容となっています。江戸時代の将棋やコンピュータ将棋の発達について触れている部分もあり、将棋史そのものをざっと概観できるものとなっています。
 テレビで見る加藤九段の話しぶりを見ていますと思考に言葉が追いつかない感じがするので、書き物にうまくまとめられるのかちょっと不安になりますが、文章は終始丁寧なですます調で読みやすく、素朴な人柄が感じられます。終戦後の将棋界の様子などは比較的詳しいので、私のような年季の浅い将棋ファンにとってためになる内容です。時折キリスト教関連の話題が出るのも加藤九段らしく、激闘に明け暮れた棋士生活との対比がユニークなところです。
 ただ、大山、升田の2大巨頭を除くと個々の棋士のエピソードは短めで、特に現代の棋士の紹介については、人物像に迫るエピソードにあまり目新しさがなく、ちょっと距離を置いた人物紹介といった感じがします。文章的にも米長氏のような軽妙さとか、河口氏のような時代の臨場感というのが薄いこともあって、読み物としてはもう一つ食い足りないところが残ります。この辺りは加藤九段が現役棋士だというところも影響しているのかもしれませんので、引退が決定した今、改めて掘り下げた著書を期待したくなるところです。