檜山良昭「日本本土決戦 昭和20年11月、米軍皇土へ侵攻す! 」

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 行きつけの飲み屋のお姉ちゃんがものすごい読書家なのであります。1年に300~400冊読むとのことで、毎回ダメリーマンが酒飲みながら先生に教わっているような状態になるのであります。
 そんな私も読書せなあかん、と思いましてなぜか檜山氏の日本本土決戦です。グデーリアン回想録が高すぎて買えなかったからですが;-o-)そんな余談はともかくとして、本書は初期の架空戦記ものとして有名な作品です。

 筋としては、まず米国での科学者の離反による原爆開発の遅延、さらに日本でのクーデターによる講和勢力の消滅。これらにより終戦の機会が失われ、日本本土上陸作戦が開始。石原莞爾が大将として首都防衛にあたり、米軍に痛撃を与えるもののついに米国は原爆を完成、これを知った石原は最早これまでと降伏。その間、天皇の身柄を確保し強引に講和を図ろうとする米軍の日系部隊が潜入し松代大本営に迫るものの、首都陥落を知った大本営の狂信的将校たちは…といったところです。

 日米間の戦闘に焦点があてられていますが、この間にソ連が大陸と朝鮮、北海道を占領しさらに東北に上陸していますので、客観的にみると決戦というより日本解体という悲惨極まる状況になっています。
 日本軍将校も誰も勝てるなどと思っておらず、思想観念に名を借りた無責任体制が多数の国民を死に追いやります。また戦闘シーンはといいますと、正規軍と国民義勇隊(つまり一般国民)による絶望的な奮戦と死にざまが繰り返し描かれるだけの鬱展開です。

 細かい点ですが、とにかく秋水強すぎ。B29を相手に無双する描写が見られますが、実際に配置できてもまともに運用できたとは思えませんし、本来の性能を発揮できたとしてもやはりMe163と同様、基地を迂回されたらおしまいになってたはずです。
 あと噴進砲(ロケット弾…本書ではもっぱら対戦車用)。この小説噴進砲言いたいだけちゃうんか、と思うぐらい頻出します。これを国民義勇隊の学校の先生とかが撃ちまくりますが、実際はそこまで行きわたらないんじゃないかと。どちらかといえば竹槍おばあちゃんの出番が欲しかったところです。

 最終的に日本は降伏の手段すら失い、千数百万の死者を出して壊滅。さらに東西分割により対立の舞台となったままストーリーは終了します。実際の戦争がここまで行かなくて良かった…と安堵するところですが、同時に背後から同じ視線を感じずにはいられません。現実の終戦もそれまで人類が経験したことのないような、想像を絶するものだったはずですから。