これまた90年代の懐かしい本です。
一人暮らしに関するエッセイを加筆してまとめた本で、筆者の一人暮らしの工夫や悪戦苦闘ぶりが気ままな文体で綴られた一冊です。
具体的な中身ですが、部屋探しやインテリア・収納・料理などに関する試行錯誤が大部分を占めていて、結構真面目な生活ハウツーものといえます。
今ならまとめサイトとかで情報をかき集めるような内容かもしれません。また、私自身生活力がなく、この本に書かれているノウハウがどれほど役に立つのか正直わかりませんが、冷蔵庫やらツッパリ棒やらフリマやらの思い出を語る言葉の端々から一人暮らしへの憧れや思い入れがよく伝わってきて、それだけでも読み物として楽しめます。
あと、実はまつい氏のマンガというのを読んだことがないのですが、ところどころに挿まれているマンガも楽しいです。特に中盤に現れる4ページのマンガ「眠らない夜と昼と起き上がらない朝」はなかなかの傑作です。私がこの本をたまに読み返してしまうのは、こうしたマンガや文章がモラトリアムの時期の心象を思い起こさせてくれるからかもしれません。
そして、最も印象に残っているのは終盤のマンガにある以下の記述です。
食と住にこれといった好みがない人は、一見、共同生活に向くように思えてそうでもない
好みがない部分は人まかせがへーき
つまり子どものように誰かに依存した生活もへーきなので誰か(母親や配偶者)の負担となる可能性大なのだ
核心を突いています;-_-)
私も家庭の暮らしに対するこだわりがないせいか家事ができないし全然やってません。自己主張がまるでないためケンカにもならないのが救いですが、酒以外のことは何でも人任せになってしまうのです。「自分(や交際相手)はおおらかで物事にこだわらないタイプだから、お互いに邪魔になることなく生活ができる」などと考えるのは誤りの元です。気を付けましょう。
というわけで、いまさらこの20年前の本を強くおすすめする理由もありませんが、いま一人暮らしをされている若い皆さんには本書の締めの一言「ひとりで生きるな ひとりを生きろ」をお贈りするとともに、豊かな生活力を身につけていただきたいと祈念する次第です。なぜか祝辞調になりましたが、仕事もつまりは生活力の延長かと思いますので。