永田和宏ほか「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」

f:id:accs2014:20170902172311j:plain:right:w210

 京都産業大学で開催された講演・対談シリーズの内容をまとめたものです。講演者は山中伸弥,羽生善治,是枝裕和,山極壽一の各氏で、そうそうたる顔ぶれとなっています。
 対談では同大学の生物学者であり、歌人でもある永田氏がホストを務めています。


 本書の冒頭には次のように記されています。

 お招きしたのは、私がよく知っていて、しかも尊敬している方々ばかりであるが、この講演と対談で感じてほしいものは、決して彼らがいかに偉大であるかということではない。端的に言って、あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じとってほしいというのが、この企画の意図であり、狙いである。

 こう書くくらいですから永田氏は相手の仕事や人間性をよく理解した上で臨んでいて、あまりカッコよくない部分も含め、相手を引き出せていると思います。また、聞き役に徹するでもなく渡り合っていて、このあたりは結構中身の濃いものになっていると思います。
 ただし、講演も含めて、青少年期や学生時代をクローズアップした内容が多いわけではなく、本のタイトルから想像されるような内容とはちょっと違う印象を受けるかもしれません。羽生さんの講演なんかもまあいつも通りだなーという感じですし;-o-)

 私としては是枝監督の部分が最も印象に残りました。字数的には短いんですけども、現場での失敗を通じて仕事へのスタンスというか考えを確立してきた過程がわかりやすく伝わってきますし、常にある仕事への迷いや不安といった部分もよく感じられるように思います。

 とにかくサッと読める内容ですので、まさに何者かになろうと努力している学生さん、若い社会人の皆様におすすめしたいと思います。