「天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃」日本将棋連盟(発行)

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 29連勝時のブームも落ち着いたものの、その後も将棋界の話題の中心となっている藤井聡太四段の書籍です。
 デビューから1年もしない棋士の本が出てしまうというのは極めて異例ですが、注目ぶりを考えると出ない方がおかしいわけで、ここにきて関連書籍が相次いで出版されています。本書もその一つです。


 内容はといいますと、公式戦29連勝とAbemaTVの炎の七番勝負(以下「七番勝負」)の各対局の簡単なまとめ、七番勝負の自戦記、同じく対局相手のコメント、日常生活等についてのインタビュー(ほぼ将棋年鑑からの転載)、七番勝負企画者である鈴木大介八段と師匠の杉本七段による七番勝負評など。公式戦29連勝はざっと振り返るぐらいで、中心となっているのは七番勝負の方です。

 メインは七番勝負の自戦記です。対局相手や対局そのものの意義について触れている部分もあり、そこから垣間見える勉強ぶりや対局への姿勢が実に真摯で、背筋が伸びる思いがします。局面の説明もしっかりしており、普段目にするプロの解説そのものです。"詰将棋が得意な中学生"というイメージがまだ残っている方もいるかもしれませんが、この自戦記を読めばそうしたイメージも一気に覆り、すでに立派な研究家であり勝負師であることがよく理解できると思います。余談ですが仮に中学生の時の私に同じ棋力があったとしても、こんな立派な文章が書けたとは到底思えません。たぶん「よくわかんないけどこう指したら勝っちゃった^o^)」とか「まだ本気出してないだけ」とかそんなのばっかりだったんじゃないかと思います;-o-)
 各対局時の服装や昼食・夕食の注文まで記している部分があったりして"観る将"を意識している面も見られますが、インタビューもロングインタビューではなくごく簡単なものですし、将棋世界Specialのようなファンサービス要素はあまりありません。ある程度の棋力があって"藤井の将棋"を知りたい、棋界の先を展望したい、と考える将棋愛好家向けかと思います。