補助金の不正受給事件を見ていて思うこと

 特定の事件について言及するものではありませんし、センセーショナルな主張をするわけでもありませんのでご承知をいただきたいと思います。
 私も各種の補助金(返済の必要のないもの。名称は補助金のほか助成金、交付金など)や融資を受けようとする事業者にお手伝いといいますか、手続きの支援をしたことがあります。金額的にはせいぜい数千万円というものですのでさほど大きいものではありませんが、その経験を踏まえてメモしておきます。

 まず当たり前の大前提ですが、国などの機関は基本的に事業者の味方として判断し、行動してくれます。支援を実施する省庁はもちろんのこと、一般に怖いイメージもある保健所や税務署、そして労基署(ここはもうちょっとがんばってほしいですが)も、べつに国民を犯罪者に仕立てようとして目を光らせているわけではありません。間違いや軽微な違反があったからといっていちいち告発してたら、そんなのは恐怖政治です。ニュースになるのは再三是正を指導してもどうにもならない場合や、よほど計画的かつ悪質な場合だけです。
 そして補助金の対象となる事業についてですが、予定通りに進まないからといってただちに不正扱いされることもありません。当初提出した計画と異なる取り組みに費用を使うとか、計画と違うものを購入する、あるいは計画した期間が延びる、というのであれば、計画変更の書類を提出し、承認を得れば問題ありません。相応の説明は求められますし文書のやりとりは確かに面倒なのですが、何かあったらとにかく早めに報告して指示通りに行動していれば、常識的に問題が起こるはずはありません。
 もし、その変更部分が補助金の趣旨に沿っていないのであればその部分は補助金の対象から外されます(自己負担で実施)し、妥当なものであったとしても事前の手続きをしていない場合は、原則的にその部分は補助金の対象から外されます(運がよければ実績報告(精算)段階での変更手続で済むかもしれません)。また、精算後に発覚すれば補助金の(一部)返還手続きがとられます。さすがに精算後に補助対象外であることが発覚するとか補助金返還というのはちょっとイレギュラーな事態ですので、原因によっては結構な注意を受けることになるかと思います(厳密には収支未確定の状況で一旦精算せざるを得ないケースもありえますので、補助金返還がすべて悪いことというわけではありません)。しかしそれらもすべて事務的に進むものであって、刑事事件に発展することはまずありません。
 というわけで、刑事事件になるような極端な事例をニュースで見て、補助金を利用することに躊躇してしまうかもしれませんが、別に恐れることはありません。そういうのはよっぽどのことですので、利用できそうなものは積極的に利用すべきかと思います。ただし、補助金で取得した備品の処分制限(〇年以内に廃棄・譲渡したら一部返還とか)など、結構いろいろな縛りが出てくるのは確かです。市町村の補助金なんかだとその辺りは結構アレですが、国はさすがに厳しいですので、その辺りはよく調べて慎重にご判断いただきたいと思います。


 ところで、私の経験上ですが「本業が忙しいから書類はアンタが作ってくれ(書類作成に慣れていないのはともかく、計画もロクに考えず第三者に丸投げする)」「なぜ国などは私の事業をもっと助けてくれない(支援内容への不満が多い)」「このビジネスはすぐにでも始めなくてはいけない。なんでもっと早く進められないのか(重要性・緊急性を強調して関係者を急かす)」といった言動がみられた事業者はことごとく潰れています。一方で、余裕をもって取り組みを進め、補助金が微々たるものであっても関係者に感謝できる事業者は業界にも地域にも定着してよく続いています。自分本位でしか考えられないようでは成功できないのは当たり前ですが、着手以前の段階でこれほどハッキリわかりやすいのも珍しいです。常識的なことですが参考まで。