はてなブロガーのロバート・熊氏による著書です。氏はかつて自らが催眠商法に関わってしまった経験に基づき、被害者を破滅に追い込む催眠商法の撲滅を願って本書を出版されました(現在はスーパーの社員をしておられるそうです)。
私は販売日のちょっと前にアマゾンで注文したもののかなり品薄らしく入荷が遅れ、数日前にやっと届きました。
内容の方ですが、催眠商法の現場となる「宣伝会場」の基本的なスケジュール、従業員の役割分担から、合法ギリギリの線でもっともらしさを演出しつつ来場者の人情につけ込み契約を獲得する技術、業者の内情までこれでもかと暴露しています。とかくセンセーショナルな取り上げ方をされやすい分野ですが、ブログと同様に落ち着いた語り口が展開されますので安心して読み進めることができます。
ちなみに、うちの会社にはサクラはいなかった。
常連さんがいるので、サクラがいると絶対にばれる。サクラを雇っているような業者は二流であり、私たちはそんなものに頼らなくても熱狂させられる自信があった。
(p180-181)
詳しくは本書をご覧いただくとして、こうした一文にも催眠商法の強力さ、危険さは表れているように思います。要は自分はだまされない、いざとなっても断れるから大丈夫と思っていても、プロによる完成されたシステムとある種の"情熱”の前には全くの無力ということです。
私も保険屋さんの勧誘を断るのにさえ毎回一苦労してますのでこれはよくわかります;-o-)とにかく会場に行かないこと、近づかないこと、これに勝る対策はありません。
とはいえ本書ではそうした対策だけで終わることなく、一方の「買う側」の事情にもきちんと言及されています。
高齢者の社会的な孤立が催眠商法の背景になっていること、そして会場で行われているのは「洗脳」であってやみくもな否定は被害者本人の反発を招き解決を遠ざける恐れがあることなど、被害に遭いやすい高齢者、あるいは被害者の家族として留意すべき点が抑えられています。さらに「買う快感から逃げられなくなったお母さん」や「病気の娘が助かるならと大金を出す親」といった節を読むと、この商法に関わる問題の根の深さが一層切実に感じられます。
というわけで、公的機関のリーフレットなどでは知ることのできない、著者の経験があってこその内容となっています。逆に悪用されないか心配されるかもしれませんがこれ一冊でマネできるほど甘くありませんので安心を。著者の意図どおり催眠商法の被害防止、撲滅に貢献する一冊になっていると思います。
なお、氏のブログはこちらです。ぜひどうぞ。