今からでもおすすめしたいナムコのレトロアーケードゲーム作品

 卓越したセンスで一時代を築いたナムコの80年代(一部90年代)のゲーム作品群のうち代表的なもの、というか私の気に入っているものを挙げてみます。今さら説明するまでもないようなものばかりとは思いますが、特にいまの若い人たちがゲームの古典を辿ろうとしたときにどの作品に触れたらよいのかわからない、ということもあるかもしれませんので敢えて記しておきます。

ギャラガ(1981年)

 同社のギャラクシアン(1979)の続編として発表されました。
 自機が敵ボスのビームにより奪われることがあり(通常はわざとそうしますが)、これを取り返すことにより2つの自機が合体しパワーアップする、という特異なシステムを持っています。パワーアップシューティングとしては先にムーンクレスタ(日本物産1980年)という作品がありそちらも重要ですが、ギャラガの方が撃ちまくる爽快さを重視した内容となっておりロングセラーとなりました。
 また、サウンドや多彩なボーナスステージなど演出面での進歩も感じられた作品です。サウンドに関してはラリーX(1980年)の方が有名かもしれませんが、ギャラガの方が音楽性が明確で印象が強かったように思います。

ゼビウス(1983年)

 社会現象ともいえるブームを生んだ、縦スクロールシューティングゲームの、そしてアーケードゲームの金字塔です。
 縦シューティングにはミッションX(データイースト1982年)といった興味深い作品もありましたが、ゼビウスの完成度が余りに突出していたため事実上このジャンルの開拓者とみなされています。
 システム的には空中物と地上物の撃ち分けシステムが特徴で、刻々と変化していくマップに配置された地上物などの画面構成はもとても洗練されています。キャラクターのなめらかな動き、統一感のある造形と色彩も相まって、当時は一瞬一瞬がCG作品のように思えたものです。地上物は完全固定である一方、空中物の出現は毎回異なるものとなるため、パターンにならないところもゲーム的に奥が深いところです。
 また、隠れキャラクター(ソル、スペシャルフラッグ)という概念を生んだゲームでもあります。このうちソルについては脈絡のないものではなく、きちんとシナリオに組み込まれているキャラクターであるというのも驚異的です。
 神秘的な地上絵や巨大要塞アンドアジェネシスなどのフィーチャーも抜群のインパクトで、天才的なセンスの塊のようなゲームですが、とにかく縦スクロールというジャンルの特性を最大限に生かしていて、先を見ずにはいられない魅力がありました。

ドルアーガの塔(1984年)

 騎士である主人公ギルを操作し、60階建ての塔に巣食う悪魔ドルアーガを倒しヒロインのカイを救うというアクションRPG作品です。
 各階に隠れている宝箱を出現させアイテムを取得していくことで主人公のパワーアップを図ることができますが、多くのアイテムはクリアに必須であるため、その出現条件を正確に理解し素早く実行することが欠かせません。しかしそれは難解なうえにヒントが全くないので、普通にプレイしていては手も足も出ません。それ以前にデモプレイもないため、基本的なルーチンである「鍵を取って扉にたどり着く」こと以外に何をどうやればいいのか理解することすら難しいゲームでした。
 余りにも冒険的な仕様のゲームですが、インターネットはもちろんゲーム関連メディアも発達していない中でこの謎解きは熱狂的に盛り上がり、ナムコを代表するヒット作の一つとなりました。

 不条理としか言いようのない宝箱システムがよく取り沙汰されるものの、それさえ克服できればパズルアクションとしてのゲーム性の高さが理解できるものと思います。そもそもゲームにおいて防御という発想さえ稀な時代でしたが、1ボタンで攻撃、魔法防御、壁破壊の操作を行うことができ、敵の接近に応じて巧みに使い分けるというゲームシステムは実に秀逸です。
 キャラクターと演出の豊かさも抜群です。3階で初めて現れるブルーナイトは主人公が近づくと剣を抜いて迫ってきますが、それだけでも見たことのないカッコよさがありました。また、神出鬼没のマジシャンや凶悪な火力を持つドラゴンなど、それまでアーケードゲームに存在しなかった「剣と魔法の世界」を圧倒的に印象付けました(ただしCavelonという興味深いゲームがあります。参考まで)。
 ゲーム展開はテクニカルで時には運頼みなものになりますが、主人公が着実にパワーアップしていく様子が力強く感じられます。特にドルアーガを倒すのに必要な最強剣「エクスカリバー」を手に入れる44階、45階の攻防はこのゲームの白眉といってよいと思います。最終盤の59階、60階もそうですが、プレイ展開にどこか儀式的な趣があり、そこがプレイヤーの達成感を高めていたと思います。
 サウンドも素晴らしいものでした。張りのある音色で多彩な楽曲が展開していき、マニアになれば音だけ聞いていてもゲームの展開を理解できたと思います。また、ステージ開始時のサウンドなどは筐体(もちろんテーブル)ごと唸るような迫力があり、これぞデジタルシンセサイザーだと感じた方も多いことでしょう。

パックランド(1984年)

 世界的キャラクターである主人公パックマンを操作してモンスターを避けながら進み、迷子の妖精を妖精の国に送り届けるという、アスレチック要素が強いジャンプアクションゲームです。ジャンプだけでなく左右の移動もボタン、という操作系が独特です。
 街、山、林、水辺など多彩なステージ構成(朝昼晩も表現されています)は見ているだけでも楽しく、画面全体に夢が溢れた素晴らしい作品です。また、移動スピードを微妙に加減することで繊細な操作ができるなど操作面でも奥が深く、純粋にアクションゲームとして完成度の高い作品となっています。 
 ステージ構成などをみても後のスーパーマリオブラザーズにも多大な影響を与えたことは明白ですが、そちらと同様に誰からも広く愛される歴史的な名作です。

モトス(1985年)

 自機の体当たりで敵をパネルから落とすという、ルールだけは単純なアクションゲームです。
 単純ではありますがその正体は高難度のパターンゲームであり、好き嫌いが分かれる作品でもあります。しかしそこが苦にならなければテンポも良く、極めて中毒性の高い作品です。硬質なグラフィックとサウンドも実にクールです。
 いわゆるナムコ黄金期の作品としては最後期の作品となります。以降、1フレーム1ドットにまで神経がいきとどいたようなゲーム性が次第に薄れていったのは残念なところではあります。

アサルト(1988年)

 戦いを知らぬがために地球人に制圧されてしまった浮遊大陸の住民が、故郷を取り戻すため敵(もちろん地球人)に孤独な闘いを挑むというシナリオが熱い戦車ゲームです。マザーボードシステム「システム2」の拡大回転機能を生かし、自機ではなく背景が回転するというギミックと、ツインレバーによる操作が特徴です。
 ナムコは戦車ゲームの名門でありますが、自機はいずれもやわらか戦車ばかりでこのゲームも1発食らうと即ミスになります。しかし敵戦車・砲台はやたらと固く、画面外からも砲弾ミサイルがバリバリ飛んでくるサディスティックな高難度ゲームです。正直なところ画面効果と操作系のインパクトに比べるとプレイの爽快感が薄く、後半のひたすら耐える展開もつらいものがあります。セールスもさほどではなかったと思いますが、ストイックな世界観とヘビーなサウンドの魅力が理解できる方にはおすすめしたいと思います。

スティールガンナー/スティールガンナー2(1991年/1992年)

 近未来の都市でのテロリスト集団との戦いをモチーフとしたガンシューティングゲームです。
 それまでのガンシューティングゲームといえばオペレーションウルフ/オペレーションサンダーボルト(タイトー1987年/1988年)あたりが代表格でしたが、あちらの泥臭く男臭いイメージとは違い、こちらは未来的なメカがバンバン飛び交うスピーディな展開とスマートさが持ち味です。弾数制限もなく、敵だけでなくさまざまな街中の物体を壊しまくることができてとても爽快なゲームです。

スターブレード(1991年)

 本格的なポリゴン時代の到来を告げた宇宙戦争もののガンシューシューティングゲームです
 ゲーム的には狙って撃つだけであり上記のスティールガンナー以上に単純であるものの、刻々と変化するシーン展開と雄大な映像表現、そして寡黙な演出が優れた作品です。
 ちなみに、別の記事でも感想を述べています(こちら)。

タンクフォース(1991年)

 タンクバタリアン(1980年)及びファミコンのバトルシティーのリメイク作品です。
 特に目新しい要素もなくキャラクターデザインもヌルい印象で、同じ戦車ゲームでもアサルトのような野心作とは程遠い存在ですが、遊びやすく調整されていて万人向けの佳作となっています。

F/A(1993年)

 対空対地撃ち分け型の縦スクロールシューティングです。実在兵器をモデルにしていたのが特徴ですがグラフィック的には当時としても地味でした。一方でとにかく派手なテクノサウンドの印象が強いゲームです。
 選択できる自機が16種類もあるものの突出した性能のものはありません。また、ボムもなく、ステージも比較的長いのでごまかしが効きません。とにかく敵の出現順を覚えてパターン化し正確に処理していくことが求められます。ただし敵の攻撃も無茶苦茶なものではないので、きちんとやりこめばラスボスに至るまで緊迫感のあるプレイが楽しめます。地上物の破壊音が心地よく、特にバルカンでなぎ倒すのが楽しかったです^o^)

エアーコンバット(1993年)

 これまた初期のポリゴン空戦ゲームです。
 自機のF16を操縦桿とスロットルで操作し、1機ずつ現れる敵航空機を次々撃破していきます。どちらかというとシミュレーション色の強いライトな作品で、大作感は全くといっていいほどありません。
 武器は機関砲とミサイルですが、基本となるのは機関砲です。敵機との位置関係を掴み、的確なリード射撃を行うというのがこのゲームのキモで、チリチリという独特の音声とともに弾丸がヒットする手ごたえは地味ながら格別なものがあります。そこが理解できないとミサイルが当たるか当たらないかの運ゲーにしか見えないところが残念ですが、短い時間で遊べる手軽さもあってついつい遊びなおしてしまう、隠れた傑作です。